■潜在意識と自愛

働き者の女と使えない男【野口英世①】

今から数週間ほど前のこと
私はいつものようにお気に入りの書店で
目につくままに何冊かの小説を手に取り
そのあとはまたいつものようにホロスコープのコーナーで
新しい本を手に取り、レジに向かった。

 

元気のいいおばさん(お姉さん?)の店員さんに会計をしてもらい
5冊ほどの本を袋に詰めてもらっているときに
そのおばさん(お姉さん?)に
『福島県の観光案内のパンフレットをお付けしていいですか?』
と言われたので
私は『はい』と答えた。

 

東京の本屋さんで福島県の観光マップをもらうのって、なんか変な感じ。
震災や原発で大変だから福島県も人を集めて観光収入を得ようとしているのかな?
なんて思いながら、なんとなくパンフレットをのぞいてみた。

するとそのパンフレットに
『野口英世記念館』とデカデカと記載があり
私は、そういえばあの有名な野口英世は福島県の人だった、と思い出した。

 

最近では東北男子と言えば
大谷くんがものすんごい活躍を見せているので
私は同じく東北男子の野口英世に興味を持ってみてもいいかも、
と思った。

私は福島ではないが青森出身で
学生時代から8年間、仙台に住んでいたので
やはり今でも東北贔屓なのである。

 

そうしてこの偶然に渡されたパンフレット1枚が
私と野口英世を繋いでくれた。

誕生日の前の日の3月30日に
野口英世記念館を訪れる流れになった。

 

それもこれも相方に
『いつか野口英世記念館行ってみたい』
とボソッと言ったら
自然と流れで、野口英世の生家がある猪苗代に行くことになった。

 

 

私は青森の田舎で育ったせいか
やっぱり自然の中にいると落ち着く。

そうそう、この感じ!って感じる。

 

高速を走りどんどん猪苗代に近づくと
目の前に磐梯山がドーーーン!!と姿を表す。

 

うん、やっぱりこの感じ!いいね。

 

 

野口英世記念館を訪れるにあたって
あまりに知識がないとつまらなそうと思って
私は事前に野口英世の伝記っぽい本を読んだ。

渡辺淳一さんの本なのだが
Amazonで評価がいいので買ってみた。

渡辺淳一といえば失楽園のイメージしかなくて
よほどの変態エロジジイに違いない!と勝手に彼に偏見を持っていたのだが

この本はスルスルと流れるように読めて
4日ほどで上下巻合わせて600ページほど読めた(驚)

 

 

小さい頃に火傷をして左手が開かなくなったこと、
身長が小さかったこと、
貧しい農家の生まれであったこと、
ど田舎で育ったこと。

これらをコンプレックスとして抱いて
『なにくそ!!』と気合いでガンガン世界に飛び出した英世に
私はどこか共感したのかもしれない。

 

 

野口英世のお母さん、イヌさんも
これまた変わった人で
酒ばかり飲んで働かない旦那の代わりに
朝から晩まで働き詰めで
『自分がちゃんと近くで見てなかったから
英世の左手がこんなことになった』と
罪悪感を持ち合わせながら

勉強のできる英世のために
尽くしまくったように見える。

 

そんなイヌさんに
世界中の全母親はどこか共感するのかもしれない。

 

愛と自己犠牲は間違いやすい。

 

 

そして、これは田舎特有なのか
時代のせいなのか分からないが

『酒飲みで使えない男の横で
懸命にどんなことにも耐えて働く女』
の姿は
私にはなんだか馴染み深い。

 

それは私のおばあちゃんの姿とも重なるし
私の田舎では、そういう
『使えない男と、やけに働く女』
というペアをよく見かけた。

 

だから私はミシミシと心が痛むような感覚を感じながらも
あっという間に野口家に没入し
気づいた頃には野口家とワンネスしていた。←笑😂

 

 

英世が火傷をした炉端

 

自分がミウラユキなのか
野口英世なのか、
野口イヌなのか。
野口シカなのか?

もはや区別もつかないくらいワンネスしてしまったのである。

 

 

ちなみに野口シカさんは
英世の姉であるが
彼女は母親が手の不自由で勉強のできる弟に尽くしまくるのを傍目に見て育った人である。

彼女もまた母親と同じように
『使えない夫』を持って
子供を五人抱えて苦労をしたという。

あの本には
シカさんは、
母親があまりに弟に尽くすもんだから嫌な気持ちを抱いていた、というような記載がある。

 

勉強のできる弟、
手の不自由な弟、
罪悪感がある母親。
働きづめの母親。
使えない父親。

 

この環境にいたら
シカさんがコンプレックスを抱くのは無理もない。

だってシカさんは勉強すら満足にできなかったから。

 

 

野口家の家の前から見える磐梯山

 

 

私も幼い頃、
優秀で生徒会長をやるような妹に対して
強いコンプレックスを持っていたから
シカさんの気持ちは痛いほど分かる、ような気がする。

 

 

しかし野口家の女たちは我慢強すぎる。

本の中ではその我慢強さ、忍耐強さを
『東北人の気質』として書かれていたような気がするが
東北人の私はそのあたりの我慢強さはあまり持ち合わせていない。

もし自分の夫が家のお金を持って酒に注ぎ込んだら
即刻死刑!!である。

なぜシカさんもイヌさんもあんなに耐えたのか?

夫いう存在がいて、
体裁上、形だけの家族をキープしておくほうがいいと考えたのか?

それとも離婚とかしない時代だから、なのか?

『そういう時代』と一括りにしていいのか?

 

そんな使えない男とSEXができる、というのも
私には理解できない感覚だ。

子供がたくさんいたわけだからそういう行為はしたわけだよね。

なぜしたのか?
したかったのか?
無理矢理させられたのか?

彼女たちはどういう意識で生きていたのだろう。

その日その日を乗り切ればいい、という感じなのか?

私には分からなかった。

野口英世と母の関係は美談として語られることが多いが
私は決してそれを美談にしてはいけない、と思う。

哀しい話にする必要もないのだが。

 

 

とにかく気が付いたら
私は野口家に夢中になっており

小学校のときに読んだ野口英世の本は
ちっとも面白いと感じなかったが
綺麗事が一切書かれていないあの本は
あっという間に読んでしまった。

 

 

やはり子供向けの本には
ある程度綺麗事が必要だと大人たちは考えているのだろう。

 

小学生向けの伝記には
野口英世は借金大魔法で
あらゆるとことで借金をしまくり
現在価格にすると数千万にも上る借金をして
それをほぼ返済していない、
ということは書かれていない気がする。

 

また、
少し金が入ると英世は風俗に通い詰めて、
女を抱きまくった、という話も書いていない。

英世の知り合いたちが彼のことを
『とんでもない性欲の持ち主だ』と言っていたことも書いていない。

 

こういう事実が書いてあったら
私も小学校のときに伝記を好きになったかもしれない。

 

現に私は英世のダメっぷりを読めば読むほど
彼に親近感が湧いた。

 

 

勉強ができて努力家の立派な野口センセーに私は興味がない。

私が知りたいのは彼の潜在意識のストーリーである。

私が知りたいのは本当の野口英世である。

 

 

 

〜つゞく〜

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