【前篇】とある無能なプリンセスのストーリー

とある無能なお姫様のストーリー。

 

 

 

 

私が一番好きなのはボーッとする時間。
あとはカワイイものに囲まれて、うっとりする時間。

カワイイものが好き♡

 

 

小さい頃はお人形さん遊びや
ドールハウスが大好きで
いつか大人になったら、
自分の小さくてカワイイ女の子の赤ちゃんと一緒に
そんなドールハウスで遊ぶことを夢見ていた。

 

ぼんやりしていると時間が過ぎていることがよくあるけれど
小さい頃、1人でぼんやりとカワイイ空想に耽っていると
決まってお母さんが私を現実に引き返す。

 

 

『ねぇ、宿題は終わったの?』
『お父さんが帰ってくる前に早く終わらせて。お片付けもして!』
『いつまでボーッとしているの?あなたはいつもそうなんだから…』

そうやってため息をつくお母さんを見ていると
私は胸がギュッと苦しくなり
『あー、私って本当にダメな子なんだ…』
『なんで私はこんなにボーッとしちゃうんだろう』
と悲しくなる。

 

 

 

大好きなお母さんに笑っていて欲しいから
だからちゃんとお勉強もしてお片付けもして早く動かないと…!

頑張って早く動こうとすればするほど
体の動きが鈍くなり
コップのお水をこぼしてしまって
またお母さんがため息をつく。

 

 

『なんであなたはそんなにトロイのかしら?』
『従姉妹のアヤちゃんはいつもテキパキしてあなたとは正反対!』

お母さんの眉間のシワが出ている時は
私がお母さんを困らせている証拠。

お母さん、ごめんなさい。

 

 

でも私はなぜかいつも『ごめんなさい』を言えないんだ。

どうしてだろう?

 

その代わり、目に涙が溜まってきて
お母さんをただじっと見ることしかできない。

 

 

そんな私を見て
お母さんは呆れたように灰色の顔でご飯を作り出す。

お父さんは今日もお家にいない。

 

 

 

あぁ。なんで私は『ごめんなさい』を言えないんだろう。
なんで私はアヤちゃんみたいにテキパキできないんだろう。

そうか。お人形さん遊びばっかりしているからいけないんだ。
カワイイ空想ばかりしているからダメなんだ。
お遊びは我慢してもっともっとお母さんのために頑張らないと。

 

 

 

そうやって過ごしているうちに
いつしか私は大人になり、そこそこ好きな人と結婚をして
待望の娘も持てたけれど…

夢は叶ったはずなのに
なぜか毎日何かに追われて心がソワソワする。

 

職場でも頑張っているつもり。
皆に迷惑をかけないように
会社に貢献できるように
たくさん勉強をして残業もして
自分なりに努力をしてきた。

努力をすれば
きっと上司はもっと私の存在を認めてくれるし
そうしたら昇給して家計にも貢献できる…!

 

だからもっともっと頑張らなきゃ。
今の私が満たされないのは
きっと私の頑張りが足りないから。
私が人よりもトロいから。
私が頑張ればみんな幸せになるはず。

 

 

 

 

 

そんな彼女が人生の転機を迎えたのは
これから3日後の話。

いつも通り出社した彼女は
朝の会議中に酷い頭痛に襲われ意識を失い
そのまま救急車で近くの総合病院へ運ばれたのでした。

 

=続く=

 

 

 

 

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